第3号


夕張高校チャレンジ・モア・スピリッツ 第3号

ピコピコシステム 始動


 中学生・高校生を対象としたスクールバスの予約システム(ピコピコシステム)がこのほど、運用開始となった。

 

ピコピコシステムとは

 スクールバスのうち、乗車人数が一定でない平日最終便(部活動後に乗車する便)と、休日便について乗車予約を行うシステム。

 インターネットに接続された家庭等のパソコン、スマートフォン等から操作することができるほか、高校、中学校、バスまちスポットに予約専用タブレットを配置する。

 これまで、平日最終便と休日便は、乗車人数が部活動等に左右され、一定でないことなどから、使用する車両の定員と、実際の乗車人数との間に差(無駄)が生じていることが課題となっていた。

 このシステムを通じた生徒たちの予約操作によって、乗車人数が少ないときはタクシー車両等の小さな車両で運行できるようになり、運行する事業者の負担軽減につながる。

 まさに生徒たちが今、住民の一員として地域交通を守っているのである。

 

開発に関与した夕張高生

 夕張高生5名(髙橋さん、二階堂さん、北上君、田中君、本間さん)は、モニターとして、7月26日より一か月間実際にシステムを試験的に使用し、利用者の目線から改善点等を提案することで開発に携わった。

 夕張高生からの提案が反映され、システムがより使いやすくなったことにより、中学生・高校生からは、「簡単」「使いやすい」等の声があがっている。

 彼ら5人の夕張高生が、市内中高生のスクールバス予約化の挑戦に先鞭をつけたと言えよう。

システムを開発した㈱ユニ・トランド井下氏に質問する夕張高生
システムを開発した㈱ユニ・トランド井下氏に質問する夕張高生
改善前後のシステム画面
右:改善前画面 左:夕張高生の提案による改善後画面 氏名の入力が省略され、スピーディーな操作が可能になった。

夕張高生の提案をもとに改善されたシステムを使って予約操作を行う夕張中学校の生徒
夕張高生の提案をもとに改善されたシステムを使って予約操作を行う夕張中学校の生徒

市政にコミットする夕張高生

 夕張高生の市政へのかかわりの成果は、「ピコピコシステム」だけではない。読者のみなさんの多くは、すでに新聞・テレビ等の報道でご承知かと思うが、夕張高生は、家庭科の授業において南清水沢3丁目に開設した「バスまちスポット」の企画を行った。

 必要な備品や、内部空間のデザインなどを通して、様々な年齢の利用者にとっての使いやすさ、公共について考えながら議論を進め、アイデアをまとめた。

 夕張高生のアイデアをほとんどそのまま採用した「バスまちスポット」は、平日正午から午後7時半まで。休日正午から午後4時半まで、誰でも利用することができる。

 普段バスを使わない読者のみなさんにも、ぜひ一度足を運んで、夕張高生の活躍を肌で感じてほしい。


夕張高校チャレンジ・モア・スピリッツ 第2号

夕張高生 道外で学ぶ


日本の次世代リーダー養成塾(福岡県宗像市)

 夕張高校2年生の小笠原萌さんが、福岡県宗像市において7月25日から8月7日までの日程で開催された「日本の次世代リーダー養成塾」に参加し、未来を担うリーダーとしての考え方などを学んだ。

 

日本の次世代リーダー養成塾とは

 高校生を対象に開催される。2週間にわたって各界リーダー(知事、大学教授、社長等)による講義のほか、参加者である高校生自身が日本、世界のことについて議論し合うなど、未来を担う次世代のリーダーとなるための力をつけるため、さまざまな取り組みを行うもの。

 

卒塾式において握手を交わす小笠原さん
卒塾式において握手を交わす小笠原さん

選考試験を通過して

 小笠原さんは、北海道内での選考試験に合格し、「参加権推薦枠」で参加した。試験は一次が書類審査、二次が面接とグループディスカッションとなっている中で、教諭からアドバイスを受けながら、大変な準備を経て、見事参加枠を勝ち取った。

 

得ることができた経験、学び

 一番大きなイベントであった「アジアハイスクールサミット」では、全てで8つある組ごとに「争い」というテーマをもとに2週間にわたって議論を繰り返した。

 小笠原さんの組は「偏見」から始まる争いについて深く議論し、発表に向け、団結して頑張った結果、発表会では見事優秀賞を獲得した。賞品は元マレーシア首相のマハティール氏の直筆サインであった。

 小笠原さんは、これらの経験を通じて、みんなで励まし合い、アドバイスし合う「団結」の大切さや、人としてのあり方を学んだほか、かけがえのない大切な仲間を得ることができたと述べた。

 また、小笠原さんは次のようにも延べている。

 「リーダー塾に限らず、どんな不安なことでも挑戦してみることは大切だと思います。実際に私も、これに参加するための選考試験に対してや、リーダー塾の期間中うまくやっていけるかなどの不安を持っていましたが、行ってみればかけがえのない経験ができました。

 挑戦することは、どんな時にでも皆さんにとって重要なことになってくると思います。皆さんもぜひいろいろな機会で挑戦していってみてください。」

*        *        *

集合写真:八丈高校の生徒たちと
八丈高校の生徒たちと

東京都八丈高校留学体験

 夕張高校2年生の田中宏樹君、石上弥咲さん、及川莉子さんの3名が、東京都八丈高校において、10月3日から9日までの日程で留学体験を行った。

 

八丈高校留学を経て起きた変化

 期間中は八丈高校との交流のほか、地熱発電の調査など、生徒はそれぞれの課題に取り組んだ。

 3名の生徒は、八丈高校留学を通じて、知らない人とでも積極的に話題を振ったり、質問したりするなどの「コミュニケーション力」や、何事にも一歩踏み出そうとする「挑戦心」が身についたと述べた。


夕張高校チャレンジ・モア・スピリッツ 第1号

全道最優秀賞 まちへの想い


表彰状を手に笑みを見せる二階堂さん
表彰状を手に笑みを見せる二階堂さん

全道家庭部会意見・体験発表大会で最高賞

 夕張高校3年生の二階堂ののかさんが、8月25日に江別市で行われた道高等学校長協会主催の体験発表大会で最高賞となる最優秀賞を受賞した。

 

実る夕張高生の挑戦

 二階堂さんが所属する3年生は、市の依頼のもと、5月から計8時間、家庭科の授業の中で、仮設のバス待合所である「バスまちスポット」(南清水沢3丁目ホーマックニコット夕張店横)の空間デザイン等に挑戦した。

 また、夕張高生は、7月7日・8日に行われた学校祭において、全校生徒をあげたよさこいを史上初めて取り入れるなど、学校祭のスタイルを大きく変えるチャレンジを成し遂げた。かつて夕張市にあった「夕張寅次郎」の振り付けを完全コピーしたよさこいは、8月25日のメロード納涼祭でも披露され、評判をとった。

 

全道最優秀 発表内容全文

 「夕張は倒れたままか。」「夕張は言い訳するのか。」今年3月に完成した夕張市のまちづくりコンセプト映像にある台詞の一部です。

 みなさんご存じのように、私のふるさと夕張は全国で唯一、財政破綻をした地方自治体です。あれから人口は3割減少し、6つあった小学校と3つあった中学校はそれぞれ1つに統合されました。図書館や美術館がなくなり、水道料金が値上げするなど、「全国で最高の負担、最低の行政サービス」と言われました。

 財政破綻当時、私は小学校1年生でした。私にとって小学校の統合は大きな出来事でしたが、暮らしそのものは変わらず、子供にとって財政破綻の重さを知ることはありませんでした。しかし、メディアがとりあげるのはネガティブなものばかり。いつしか私は「財政破綻はもういいよ。」という気持ちになっていました。

 そんな状況が変わり始めたのが昨年です。財政破綻から10年が経ち、新たな街づくりを目指し始めたのです。その宣言といえるものがまちづくりコンセプト映像だったのです。

 そこでは「若者はエネルギーだ」とし、「再出発、挑戦あるのみ。Restart. Challenge More」のメッセージで終わります。

 私はその撮影に高校生スタッフとして参加しました。これをきっかけに『私たち高校生が夕張市のためにできることは何だろう』と考えるようになりました。

 そんな中、この5月に家庭科の授業で、バスまちスポットという施設の内部空間を、市役所の方と協同で考えることになったのです。

 私たちが最初に学んだのは、「公共」という概念でした。公共の場とは、誰もが過ごしやすく使いやすい場でなければならないということ。それを前提として私たちは考えました。屋外にベンチを置いて買い物途中に気軽に休めるようにしたい、乳幼児が遊べるスペースがほしい、観光客にも利用してもらえるように看板を作ろう。様々な人の交流の場としてカラオケを設置したらどうか。子どもたちのために「うさぎ」を飼おう…私たちは次から次へアイディアを出し合い、そしてその結果を市の職員の方々にプレゼンしたのでした。

 ところが市の職員の方から『カラオケを置いても皆が楽しめるとは限らないんじゃないかな』とか『うさぎを飼うと言っていたけれど、糞の始末は誰がするの?』という指摘ありました。

 一瞬、場が凍り付きました。私たちにしてみれば「せっかく考えたのにそこまで厳しく言わなくてもいいじゃないか。」という気持ちになったのです。しかし、その後、改めて自分たちの案をとらえなおしたときに、私たちの姿勢にまだ甘さがあったことに気付きました。つまり、私たちは利用する側の視点だけで考えていたのでした。私たちは公共の場に生きていながら、公共の場の意味にさえ気づかず、与えられたものは空気のように当然そこにあるものとして生きているのではないでしょうか。私たちは公共サービスを受ける権利もありますが、同時に果たさなければならない義務もあります。守らなければならないルールやモラルも存在するのです。

 そこで私たちは、各グループからの提案を検討し、再修正する形で市に対して最終提案をしました。また、市民に向けた利用マナーの呼びかけや近隣の商業施設への協力依頼文も作成しました。

 こうした私たちの取り組みを夕張市は評価してくださいました。この取り組みのあと、独身者向け住宅の間取りやデザインを私たち高校生と協同で行うことも始めています。

 この高校生の考えを地域社会に反映させるという新たなチャレンジは、私に『地域の一員』という意識を芽生えさせてくれました。私たちが行政や政治に対して関心を持ち、声をあげることの重要性を理解し、自分たちが高校生としてできることは何かを本気で考え始めたのです。

 例えば、私たちは今年の学校祭のスタイルを大きく変えました。一間口の小さな学校ができることとして、全校生徒によるよさこいを披露したのです。これは夕張市にかつてあったよさこいを復活させたものです。それを見たあるお年寄りは「元気をもらいました。」とおっしゃっていました。私たち高校生が失敗を恐れずにチャレンジする姿は、地域の方々に勇気を与えるものだと確信した瞬間でした。

 夕張市が「Restart.  Challenge More.」をスローガンにして立ち上がろうとする今、私たち高校生も直接地域にかかわり、さらに夕張市の希望となる一歩を踏み出すことができたのです。

 私たちは立ち上がる。言い訳をしない。チャレンジ・モア・スピリットで未来に立ち向かうことをここに誓います!